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けいすけコラム【たくぎんの抵当権が遺ってた】

『たくぎんの抵当権が遺ってた』

 みなさんはかつて北海道拓殖銀行という都市銀行が存在していたことを覚えていますか。先日、北海道拓殖銀行、たくぎんの抵当権が抹消されずに残っている登記記録に出会いました。たくぎんが経営破綻したのは1997年のこと。当然被担保債権は消滅しています。この抵当権はどのようにして抹消すればよいのでしょうか。

 抵当権の抹消登記は銀行から抹消書類をもらって、法務局に提出します。もう少し司法書士らしくいうと所有者である登記権利者と、抵当権者である登記義務者が共同申請するのが原則です。さて、たくぎんの場合、登記義務者は誰か、すなわち抹消書類は誰に出してもらえばよいのでしょうか。ウィキペディアによると、たくぎんは1997年に経営破綻、翌年北洋銀行等に事業譲渡、1999年に法人解散を経て、2006年に清算結了しています。清算結了しているので、たくぎんの法人格は完全に消滅していますが、こういった場合、かつて清算人であった人から抹消書類を出してもらえばよいことになっています。
 今回、幸いにしてというか残念なことに、当該抹消登記を申請したのは弊社ではなかったのですが、インターネットで調べたところ、たくぎんの清算人は司法書士が務められていたそうです。心配しているよりも簡単に抹消できるそうです。ただし、20年近く前に清算結了しているので、その司法書士もいつまでも元気でいるわけではないのだろうなと思います。

 ところで今回このコラムを書くにあたって、ChatGPTにバブル崩壊で経営破綻した金融機関のリストを作成してもらいました。たくぎんのほか、日本長期信用銀行、東京相和銀行など銀行が16行、神田信用金庫などの信用金庫が14庫ありました。経営破綻した金融機関であっても、日本長期信用銀行のように、現在はSBI新生銀行に形を変えています、というものや、神田信用金庫のように現在は興産信用金庫に吸収合併されました、というものであれば、現在の法人に抹消書類を出してもらうことは、そんなに難しいことではなさそうです。一方で、たくぎんや東京相和銀行のように完全に法人格が消滅しています、という金融機関の担保権の抹消は年々困難になっていくことが予想されます。

 なお、令和3年の民法改正で、法人の清算人の所在が判明しない、被担保債権の弁済期から30年経過、法人の解散から30年経過、という要件を満たした場合は、所有者の単独で担保権を抹消できるという規定が設けられました。清算人であったものが死亡した場合も所在が判明しないという扱いのようです。たくぎんの場合、仮に清算人の司法書士が死亡したとしても、2029年以降であれば、所有者の単独申請で抵当権の抹消ができそうです。本来はたくぎんのような名前の知れた法人の所在が知れないという事態は想定されていないと思いますが、昭和は遠くなりにけりというか、まさにバブル崩壊後失われた30年ということなのでしょう。とはいえ、通常の抹消に比べ手間もお金も時間もかかるので、やはり抵当権は被担保債権が消滅したらすみやかに抹消する、ということが大原則ということになります。